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総一♀で総士が一騎さんの義弟で一騎さんは甲洋に淡い恋心を持っていたって話を書きかけて放置してた代物を供養。さわりだけ書いてる文の多いこと。
にょたです。反転です。









「振られた、多分」
 静かなリビングに響いた義姉の声に、僕は思わず手にしていたコーヒーカップを取り落としそうになった。
「好きな男がいたのか」
 努めて冷静を装いながら、やっとの思いで姉の愚痴に応える。かさついた声に滲む動揺など気付きもせずに、彼女は僕の座るソファの隣へと腰掛けた。そのまま控えめにこちらに半身を預けてくる。左肩越しに柔らかな白のニットの感覚と、少し高めの体温が伝わり、僕の心臓をぐっと締め付けた。
「好き、ってわけじゃ、ない、と、…思ってた」
「どういうことだ?…告白は?」
「してない。するわけない」
 ならなんで振られるんだ。疵の入った左目では姉の姿を確りと見ることができずに、体ごと左に向けると、バランスを崩した彼女の頭はそのまま僕の膝に落ちる。俯せに預けられた頭の、艶やかな黒髪を指先で梳いてやりながら、なるべく柔らかな調子で声を掛ける。
「一騎、顔が見えない」
「見せたくない」
 もぞりと動いた頭が、収まりのいい場所をみつけてそこに落ち着く。襟ぐりの開いたニットからは彼女の白い背中が惜しげもなく晒されていて、気付かれないように生唾を飲み込んだ。これは外では着ないように言い聞かせないといけない。
「一緒にいると、楽だった。…落ち着けた。でも、俺は別に、好きとかじゃないって、だから、ずっと、応援してた」
「応援…?」
「好きな子がいたんだ、そいつ。可愛くて、優しくて、頭もよくて」
 俺なんかより、ずっと女の子らしい。綺麗な。
 ぐずりと、鼻をすする音が聞こえた。泣いている。ぎくりと指先が強張った。
 義姉は、気丈な人だ。過去に彼女が泣いたのを見たのは、僕が記憶している限りでは二回。僕の左目にこの疵が入った時と、そのせいで長年ぎこちなかった僕らから、わだかまりが消えて、もとの関係に戻ることが叶った時だ。何れも、自分が関係していた。彼女の涙は、僕だけのものだった。
 一騎を泣かせた、僕の知らない誰か。胸の中にどす黒い感情が広がっていくのを感じる。
「今日、二人、付き合い始めたって。それ聞いて、つらくなって、なんでだろって思ってたらさ、遠見が、」
 尚も膝の上でくぐもった声を出す姉の口からよく知る女性の名前が零れる。遠見真矢。一騎の幼なじみで、よく家にも遊びに来る。そういえば、同じ大学だったか。
 彼女の観察眼は鋭い。自分でも気付かないような心の内側を、「なんとなく」で見つけ出してしまえるものだから、思春期の頃には彼女の存在が少し恐ろしくて、けれど、憧れていた。
「遠見が、『失恋したの?』って、それで、俺、恋だったんだって…」



以上。続きません
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